ローレライ
「ねぇルルーシュ。僕と一緒に死んでくれない?」
そう言ったスザクの顔は、晴れやかな笑顔で彩られていた。
ぎしり、と二人分の重みを受けベッドのスプリングが軋む。
アメジスト。エメラルド。二つの色が交差する。(瞬き、煌く。)
先に伏せられたのは組み敷かれたアメジスト。
綺麗な扇状に弧を描く瞼を小さく震わせ、「何故。」と搾り出すように呟いた。(どこを見ているの、君は。)
何故。理由なんて。そんなの。
「君が僕を見ないからだよ。」
ほら、今だって。続けた言葉に反応してか、アメジストが再び瞬いた。(あぁやっぱりとても綺麗だ。)(綺麗な綺麗な僕の宝石)
真っ直ぐに向けられた瞳の奥に宿る、彼らしからぬ不安の色。(それすらも、自分が与えていることに満足して。)
「僕が怖いの?」
問いかけに返される答えは「否」。(ならどうしてそんな顔。)
眉間に寄せられた皺を解す様に、そっと額に手を当てた。
そのまま髪へ、頬へ、ゆったりと手を走らせて行く。
抵抗はない。けれど、受け入れもしていない。そんな顔。
(心の奥まで触れさせてはもらえないの。)(拒絶も甘受もしないなんて、君はずるいね。)
両の手で、掻き揚げるようにして黒髪に指を絡める。
至近距離で煌くアメジストに、映り込んだ自分の姿。(ねぇ、僕を見て。僕だけを見て。こんな風に、僕だけを。)
「もう一度言うよ、ルルーシュ。僕と一緒に死んで。」(だって君はこの世界にいたままじゃ、僕を見てはくれないから。)
「でも、それが出来ないのなら」
僕だけを見ていて。落とすように告げた僕の言葉に、きっと彼は答を返さない。(そんなことはわかっていた。)
「お願いだ、ルルーシュ。」
何か言ってよ。と続けたその口で、彼の唇から自由を奪ってゆく。
(こうすれば、君は答えずに済むだろう?)(追い詰めたのは自分なのに、逃げ道を作る矛盾。)
緩やかに伸ばされる細い腕に、再び閉じられたアメジスト。
こうして僕達は溺れてゆく。
(きっと息が出来なくなってしまうまで。)
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(泡になって消えてしまうほど、僕達は儚くなんてない。)(君という海に溺れてしまった)
2007 05 09