せかいのいろ
さあさあと、木々のざわめきにも似た小雨の音が耳に響く。
移ろう季節の儚さに、その音すらも、愛しく感じて。
だって、この雨は恵みの雫。
桜舞い散る春を抜け、燃え盛る夏へと命を繋ぐもの。
息づいた命が輝くを増す、そんな光りに満ちたあの夏の日に、彼は生まれた。
風に揺られる緑は色濃く、太陽を映し出した湖面はまるで、透き通った硝子細工のようで。
美しいこの景色のすべてが、彼の誕生を祝福している。
そんな風に感じて。
『世界が貴方を祝福している』
なんて、まだ芽吹いたばかりの命には、重すぎる言葉かもしれないけれど。
もし、この記念すべき日が、暗雲に包まれた嵐の夜だったとしても。
鳴り響く雷鳴は祝福の拍手。
降り注ぐ雨は世界から彼への贈り物。
やむことのない激しい風は、新しい命の誕生を、みんなに知らせるために駆け抜けて。
きっとそんな風に感じ、それれを疑うことなんてなかったと思う。
だって、俺の世界は貴方によって創られ、貴方によって彩られているのだから。
いつ書いたのかは失念しましたが、とりあえず雨の降る眠れぬ夜に。
次男の世界は陛下中心。でもそれって諸刃の刃。
2006.6.20