この気持ちを何と呼ぶのか僕は知らない。
















 

「で、金曜とかどう?ちょうどテストも終わることだし、景気付けにぱぁーっと!!」

テーブルに腰を据えたリヴァルが、身を乗り出しながらルルーシュに話しかけた。

行儀悪いぞ。と言い置いたルルーシュは、暇だったら付き合ってやるよ。と悪戯っぽく笑った。

「えー!なんだよ、それ。どっちだよ!?」

抗議の声を聞き流しながら、それで?とルルーシュは滑らかな動作でこちらを向いた。

「スザクはどうするんだ?」

 

え?と間の抜けた声が上がったのが自分でもわかった。

 

「おいおいおい。話聞いてなかったのかよ!」

盛大に突っ込みを入れるリヴァルの声に、目を開けたまま眠るとは器用なヤツだな。とルルーシュの呆れ声が被さった。

 

「ちゃんと聞いてたよ。でも、ちょっとぼぅっとしちゃってて。」

ごめん。と頭を下げると、仕事で疲れてるんだろ。とそれぞれに労われる。

「最近はそう目立った事件もないから、それほど忙しくもないんだけど。それよりも試験勉強の方に参っちゃって。」

「あー、わかるわかる。教科書とか見てるとさぁ、眠くなったり、突然どこかに行きたくなったりするよなー。」

困ったもんだ。と、リヴァルからは溜息が零れた。

「普段からやってないからそういうことになるんだ。これに懲りたら次から真面目にすることだな。」

「お前だって授業中寝たりサボったりしてるだろ!」

ツッコミとも反撃とも取れるリヴァルの言葉に、結果が全てだ。と燦然とルルーシュが微笑んだ。

そのまま続く小気味いいテンポに耳を澄ませながら、じっとスザクは下を向いて目を瞑った。

 

「大体、この間のサボりはお前に付き合ったからだろうが。」(この間って、いつ。)(知らない、僕は。)

「それは感謝してます!ありがとうございましたルルーシュ様!」

「ふむ。まぁ、悪い気はしないな。」(そんな風に笑って、)(瞳に映るのは僕じゃない。)

「でも今回の論点はそこじゃなくってぇー!同じ様にサボってるのに何でこうまで結果が違うのか、ってことにあるんであって!」

「あぁ、それなら答えは簡単だ。出来が違うからな。元の。」(楽しそうな声、)(引き出したのは僕ではなくて。)

「あっちゃぁ〜。それを言っちゃお仕舞いだろ、ルルーシュ!」

「そんなこと誰が決めたんだ。」(「ルルーシュ」)(それは僕だけの言葉だった。)

「え。誰って・・・俺?」

「・・・・・・はっ。」(響く、声。返す、言葉。)(紡がれる音はナナリーと僕だけの、)

「お前ってやつはぁー!」

「ま、金曜まで精一杯頑張ることだな。」(笑ってる。面白がってる。話してる。楽しんでる。)(僕じゃない、誰かと。)

 

どうして、僕じゃないの 側にいるのに、ここにいるのに 僕じゃないのは何故(暗い、重い、胸が。窒息する。)

 

「喉が、渇いたな。」

二人の分も何か買ってくるよ。と言ってスザクは席を立つ。

「あ、サンキュー。」「悪いな。」

背に掛かる声に、行って来るね。と部屋を出た。

 

冷えた空気。静かな気配。響く足音。

滑る様に自販機まで辿り着き、小銭を入れ適当なボタンを押し乱暴にプルタブを引き上げ一機に飲料を飲み干した。

ごくり、ごくり鳴る音に合わせ来る爽快感。

(でも、まだだ。まだ、足りない。)(乾くんだ。)

飲み干した缶を握り締め、スザクは振り仰ぐようにして空を見た。

青く、蒼く、そして白い。(暗くて、重くて、ずっしりとして。そんな空が見たかったのに。)

 

晴れ渡った空から視線を外したスザクは、がしゃん。と音を立てて缶を捨てた後、再び自販機へと手を伸ばした。

 









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(もやもやとしたこの閉塞感は、微笑む君が生んだんだ。)(何で僕じゃないの)



1.22