笑ったままで目隠しを。













「君は知らないんだ。」 どんなに君が美しいものなのか。知らないんだ。





寂しげに微笑った顔が、紡がれた言葉が、その全てが、僕を。(繋ぎとめる)



「ルルーシュ。」


聞きなれたはずの自分の声も、その言葉を紡ぐときだけは特別な響きを孕んで空に溶ける。

(辺りに漂う空気すら、君の色で染め上げてしまうかのようで)



好きだった。『ルルーシュ』煌びやかに響く音が好きだった。昔から、ずっと。




「ルルーシュ。」


もう一度呼んで、そっと黒髪に手を伸ばしても君は目を覚まさない。
さらさらと零れ落ちる感触が心地好い。
滑らかな肌を楽しむようにして頬をなぞると、くすぐったいのか丸まるように身を捩る。
手に持つ本がパタリと床に落ちていったが、それでもまだ君は目を覚まさない。



「ルルーシュ。」


すぅすぅと健やかな眠りに落つる君に、この言葉は届かない。




「もし君が、彼だったとしても―――」




それは絶望という名の可能性。
蓋をし、封をし、奥深くに押し込めて。目を逸らして。否定して。拒絶した。



「それでも、僕は。」




本当に好きだったよ。ルルーシュ、君のことが。





微かに震えた眦に手をやると、温かなぬくもりで指先が潤んだ。
そのまま両の手で包み込むようにして額を合わせる。



「ルルーシュ。」


呟く。囁く。起きて、その紫紺に僕を映して、驚いて。



「ルルーシュ。」


呆れたように、溜息を吐いて。いつものように、『この馬鹿』って。
いつものように微笑んで。受け入れて。











 
情けなく笑う僕を嗤って。(覆って尚、隠し切れない存在感)(芽吹く声が消えない)













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(笑う。微笑う。嗤う。)

2008 09 02